夜8時過ぎ。 許可がない限り残業は出来ないことになっている社内は、人影もまばらだった。 ポツリポツリと照らされている照明の下には、 紫月の上司である相原がいる。 「お疲れさまです」 ふらりと顔を見せたのは切野社長だ。 「お疲れさまです、丁度よかった。 T社の見積もりのことでちょっと相談があったんですよ」 仕事の話をひと通りしたところで、 「じゃあ、これでよろしくお願いします」 「はい」 立ち上がった切野社長が、紫月の机の上に目を留めた。