ものすごい偶然だとしか言いようがない。

私には何もできないけど、せめて祈ろう。


実咲先輩には、あれから会えていない。

彼の死を知って、どうしているだろう。


なんの噂も耳にしないのは、いい兆候にも思えた。

心が癒えるまで、じっと休んでいるに違いない。


私の知っている実咲先輩は、身体も心も、健全で前向きな人だったから。

きっと、いつかまた、前みたいに笑ってくれる。


絶対。





商店街の裏に、小学校はあった。

夏休みなのに校庭には、子どもたちがいた。



「登校日?」

「校庭解放日やよ、あっちゃんとこは、なかった?」



覚えてない。

一度か二度、行った記憶が、あるようなないような、だ。



「あっちゃんは、学校に興味、薄いがの」

「小学校は特に、記憶がないんだよね」

「僕がえんかったでやね?」



仕返しか。

そんなわけないだろと言いたかったし、実際そんなことなかったと思うんだけど、不覚にも頬は勝手に熱くなり。

林太郎のしたり顔が気に食わなかったので、悔しまぎれに手を振り払って、校門をくぐった。


昇降口も、窓から見える机も椅子も、何もかもが小さい。

こんな半端なスケールのミニチュアみたいな世界で、6年も過ごしたなんて。


基本的なつくりは、どこも一緒だなあと眺めながら、開いていたガラスドアを抜けると、人が立っていたので、ぎょっとした。

明るいところから急に日陰に入ったせいで、よく見えない。



「1-3-42は、大逆者の番号として、永久欠番になった、それに付随して1-3-10も」



その人が急に喋りだしたので、最初、演劇の練習でもしているのかと思った。

私に話しているんだと気づいたのは、一拍置いてからだ。



「はあ」

「お前の"時"は、もう誰にも戻せねえ、奴は後世まで語り継がれる大罪人となったわけだ、めでたしだな」

「そうですか」