そんな私に相変わらず首を傾げたまま言葉を紡ぐ。
「明原 紅って、綺麗な名前だよな!」
「……っありが、とう…」
「俺は似合ってると思う。お前に」
「っうん…」
鼻の奥がツンとなる。
今泣く必要はないのに…。 名前を褒められたくらいで泣くなんて話あるもんか…。
そう思うのに視界がボヤけた。
「俺、紅って呼びたい」
君の綺麗な声で呼ばれる私の名前はどうしてこんなにも特別に感じるのかな…。
たったこれだけの事なのに、世界は一瞬にして鮮やかになる。
それはきっと、君だけが使える魔法。
「……ダメ?」
「……ううん、嬉しい」
ぎこちなく微笑んだ私にホッとした様子。
「俺のことも名前で呼んでくれる?」
「えっ…」
「あ、いや、無理にとは言わねえけど!」
「――呼び、たい…」
君がそう言ってくれるのなら。周りが許してくれなくても、君の特別の中に混ざりたい。