やめてって…。

泣きそうなる。

「どーして?!つか、どーやって?」

川原くんが焦りつつ興味津々にあの男に聞く。

ほんと、七葉と川原くんは性格がそっくりなんだから…。

「俺が。したいと思ったからした」

あいつが淡々と言うと、みんなの雰囲気がシーンとなった。

「…ごめんね。キスなんかして。でも、俺のわがまま…。したかったんだよ…」

私の方を向き小さな笑みを浮かべた。

『……』

思わず何も答えられない。

「俺、花南ちゃんに一目惚れしちゃったみたい」

(…えっ)

目を見開いた。

言ったことを頭の中で精一杯に整理する。

じゃないとおかしくなりそう。

『それって、どーゆう意味…?』

無神経にも、そう答えてしまった。

あの時の私はバカだね。

ごめんね、翼。

すると、彼は

「そのままの意味だよ」

そのまま……。

私は彼と目を合わせられない…。

不意に目線を逸らした。

「“好き”って、意味だよ」

下を向いている私の目前にニョッと顔を見せた。

『…!?』

やめて…っ。

そんなこと、言われるような女じゃないの。

“好き”とか、そう言う“気持ち”なんか、私に要らないの…。

だから、こんなこと言われたのなんて、久しぶりで。

思わず顔を赤らめた。

『…っ、あの…』

「いきなりフるとかだめだよ」

『…え』

別にフるつもりではない。

ただ、何か言わないと、向こうに悪いかなって思っただけ。

「花南ちゃんは、俺の何を知ってるの?知らないでしょ?何も」

『…そりゃぁ、初対面だし…』

「じゃあまだフッちゃだめだよ。もっと俺のこと、よく知ってよ。そしたら、もしかしたら可能性とかあるかもでしょ?確率は0じゃない」