翌朝、目を覚ますと尊は今朝も早くからシャワーを浴びていた。
私も尊の後にシャワーを浴び会社へ出かける準備をしていた。
尊は車通勤だから時間的に余裕があるけれど、私は電車や徒歩での通勤だから少しでも遅れると会社に遅刻してしまう。
慌てて化粧して荷物をチェックしていると尊が私を背後から抱きしめた。
「尊? 私、急ぐのよ。遅れちゃうわ」
「知ってるよ。一緒に出かけよう。車で送るから急ぐ必要はない」
「そんなわけにはいかないわ。それに、朝一緒に出勤したら彼女はどう思うかしら? 少しは恋人の事を考えてあげて」
あの営業一課の彼女が私を許すはずない。
ただでさえ一緒に退社し会社ではかなり目立った行動を取ってしまったばかりなのに、更に朝一緒に出勤したのでは恋人に対してどう弁解すればいいのか無理に決まっている。
「恋人は絵里だ」
「営業一課のあの綺麗な人は恋人じゃないの?」
「違う。何度か食事をしただけだ」
冷たい言い方をするのね。
例え恋人でなくてもそれなりに関係があった人でしょう?
あの時、自販機コーナー出会った時は確かに二人は恋人同士の様な雰囲気があったし彼女の目はそう物語っていた。
きっと、彼女は尊が好きで告白したに違いないわ。
そんな彼女の心を弄んでいたの?
以前の私の時の様に、彼女に飽きて捨ててしまったの?
尊は時々怖いほどに冷たい目をしている。
そんな尊をどうして嫌いになれないのか自分でも分からない。