「それに、笹岡さんは作業は早いしデスクワークに関しては問題無くやって貰っている。その点を考慮して仕事を依頼している。そこのところは皆も分かって欲しいし理解を求める」


森田さん一人を相手なら多少は文句もいいたいだろうけれど、相手が専務となると誰もそれ以上何も言えなくなっていた。

それどころか、これ以上森田さんを煩わせその内容が専務へと漏れることで自分らの立場が危うくなるのを嫌った。

結局、誰もが文句を言いたい表情をしながらも口先では森田さんの言葉に同意していた。


私は特別扱いを受けたことで森田さんに迷惑をかけたくなく、仕事に集中し周りに認められるように努力を惜しまない。

仕事に集中している間は尊の事を忘れることが出来て、これまで同様に森田さんとの息の合った仕事が出来ていた。

そうすると思いのほか体調も気分も良く仕事も予想以上に捗り、森田さんの今後の予定にもかなり良い影響を与えるようになった。


「今日一日で資料をまとめてくれたから助かったし、分かりやすい資料で先方にも喜ばれるだろう」

「森田さん、設計課から預かったデータはこれで全部です。それから、プレゼン用のCGパースが遅れているそうです。来週にならなければ仕上がらないそうですけど」

「来週? 珍しいな、設計課がそれほど時間を必要とするなんて。何か理由があるのか?」

「グラフィック担当の方が緊急入院されて、しかも、インフルエンザで数人が高熱で欠勤しているそうです」