「友美には私達を見守ってて欲しいのよ」

「私は反対よ。それに、亡くなった子どもはどうするの?彼に話したの?」


私は頭を振った。尊には伝える気がないから。

この契約には美香は関係ない。あくまでも私と尊だけ。

血の繋がった父親との契約を仏壇に報告するつもりもない。美香を悲しませたくないし巻き込みたくない。


私を説得しようとした友美だったけれど、私の決意が固いと見たのかそれ以上何も言わずにロッカールームへと向かった。

ロッカールームで着替えを済ませた友美はかなり不機嫌な顔をしてデスクへとやって来た。

私はいつもの様に仕事を始めようと準備をしていると森田さんが営業3課の社員達を集め異例の朝礼を始めた。

それは、私の件で尊に指示されたことを現場の社員達へ報告する為にだ。

私は派遣社員なのに特例の扱いを受けることに決まりその内容を森田さんから報告されると、その話を聞いた社員達の間が騒然となりかなり不満が続出していた。


「人手不足だから派遣を雇っているのでしょう? その派遣社員が足を引っ張るような事は絶対に認められません」

「派遣会社に連絡して交代させるべきだわ」

「笹岡さんは通常通りの仕事は出来るのだから交代する必要はないだろう。これまでも仕事は問題無くしているのだし、逆に俺としては笹岡さんが補助についてからはかなり助かっている。その点を考慮して専務が今回の事は決められたんだ」


森田さんの口から専務の指示だと説明が行われると社員一同口を噤んでしまった。

そして社員らは顔を見合わせては困惑した表情をしていた。