私は尊の愛人契約を受け入れた。それがどれ程の屈辱か尊は知らない。
私の身も心もズタズタに引き裂かれ修復出来ないところまできた気がする。
もう失うものは何もないけれど、唯一残った私の生きる希望を尊はあっさりと奪ってしまった。
私はこれからは生きる屍のように過ごすことになるのだわ。
翌朝、出勤すると会社のエントランスで友美が私を待っていた。
昨日の尊の電話を心配したものの私達二人の間で昔の感情が戻り、再び想いが燃え上がったのかと私への連絡を遠慮したようだ。
だけど、これは契約。
『これが契約だとは誰にも知られるな。例えどんなに親しい間でもだ。もし契約違反が分かればどうなるか強欲なお前だから良く分かるだろう?』
尊は私の身の破滅を楽しんでいる。それほどに憎まれているの?
私がいったい何をしたの?
尊を愛し愛され赤ちゃんを妊娠し尊との未来を夢見ただけなのに。
妊娠させたのは尊なのに、私には夢を見ることさえ許されないの?
「久しぶりに会って私たちの間にまだ情熱が残っていることに気づいたのよ」
「同じ過ちを繰り返すつもりなの?」
友美は私を心配してくれている。
最初から捨てられると分かっていても、もう一度尊と愛しあえるならそれだけで十分だ。
もう一度肌を重ね幸せな時間を過ごせるならそれでいい。
もう一度夢を見てその後に現実の世界を見れば、もしかしたら今の悲しみも半減するかもしれないから。