「気分はどうだ?」


尊は倒れたように床に横たわった私の体を抱き起こした。

そして、乱れる前髪を優しく指で梳いてくれた。

まるで恋人同士だった時の様に優しい眼差しで見てくれている。


夢でも見ているかのように。


「絵里、子どもはどうした? 子どもがいるんだろう? どこに預けているんだ? 連絡の必要があるだろう?!」


尊はどこから聞いてきたのか、子どもの居る場所をしつこく聞いていた。

確かに子どもはいた。可愛い赤ちゃんが。だけど、その赤ちゃんは今は天国にいるのよ。

尊はきっと赤ちゃんが居るとでも思ったのかも。

だから、最後の力を振り絞るかのように仏壇を指差した。


それが、今の私の限界だ。


体から力が抜けるとそのまま尊の腕の中で眠ってしまった。

尊は指差した方にある仏壇に気付いた。そこには赤ちゃんの写真を飾っていて、江島さんから送られた写真データと同じものだとわかった。


「まさか……」


尊は私が赤ちゃんを亡くしたと分かると部屋の中の物色を始めた。

そして、布団を見つけると布団を敷きそこへ私を寝かした。

時折、眠る私の顔を見ながら、部屋の中を更に物色し今の私の生活の様子を調べていた尊は、押し入れの中にある子供服や玩具を見つけた。

てっきり子どもは赤ちゃんだと思っていた尊はその場に座り込んだ。


「俺と別れてから何があった? それとも、他の男に子ども諸とも捨てられたのか?」


尊は自分ではない男に私が捨てられ嘆き悲しんでいると思い込んだようだ。


「何度俺を裏切ればいい? こんな女を憎みはしてもどうして助ける?」


眠る私の姿を見て尊は拳を握りしめていた。