「あまり根積めると良くないぞ。少し休憩しよう。丁度3時だ。コーヒーでも飲まないか?」
「え? でも、良いんですか? 私は正社員の人とは違うので3時の休憩時間は契約には入っていませんが」
「仕事をスムーズにして貰うためには程よい休憩も必要なんだよ。その代り今日も残業してもらうぞ」
「はい!」
森田さんが案内してくれると言うコーヒーの自販機へと行くと、そこにはいくつもの自販機が設置されていた自販機コーナーだった。
冷たい飲み物や温かい飲み物、それにコーンスープやおでんなどの変わったものまで置かれていた。
つい、どんなものが入っているのだろうかとおでんの缶を眺めていると森田さんが横でクスクスと笑っていた。
「あ、ごめんなさい。つい、なにが入っているかと思って」
「寒い時期なら美味しいけど、流石にこの季節はもう食べたいとは思えないよな」
「コーヒーは何を飲むかい? 今日は歓迎会を兼ねて俺が奢るよ」
「コーヒーが歓迎会なんですか?」
「そう、質素すぎかな?」
派遣社員の歓迎会なんてどこの会社でもそんな言葉は出なかった。
たとえコーヒー一杯だとしてもそんなセリフを言ってくれる人はいなかった。
感激で涙が出そうになる。
さっき、尊の姿を見て涙腺が緩んでしまったのが良くなかった。
森田さんの一言で涙が流れそうだ。
「え? 俺、悪い事言った? 歓迎会はちゃんとやるから、泣かないでくれよ」
「派遣社員に歓迎会なんて贅沢です。必要ないですよ」
「でも、一緒に仕事をする仲間には違いないだろ? 例え短い期間とは言え君のお蔭で俺も助かるのだから」
この人の言葉はまるで私には魔法の言葉のようだ。
初日のイメージの悪さはあっという間にどこかへと消え去ったようだ。