でも、尊との約束だからそれも言えない。

あくまでも私達の心が通じて交際していると思わせなければならないのだから。


「江島さんとの交際が続いているって言うのは何を基準にそう考えるのかしら?」


この人は尊とはどれくらいの間交際していたのかしら?
きっと、数か月じゃないわね。深い関係にもあったでしょうから。
だから、尊を手放せないんだわ。

そう思うと、胸が痛む。


「彼と私は一緒に暮らしていたのよ!」


江島さんの必死なセリフに私は思わず笑ってしまいそうになった。

尊の部屋はどう考えても独身一人の部屋。

台所も洗面所も女がいたような形跡は何もなかった。

尊が事前に彼女のモノを捨てていたとすれば別だけど。

とても、そうとは思えなかった。


「それで、彼の部屋はどんな部屋なのかしら? 寝室は? 一緒に暮らしていたならどうして出て行ったの? それとも江島さんは彼に追い出されたのかしら?」

「追い出されてなんか!」


気まづそうな顔をする江島さんは嘘をついているのだと思った。


「彼の寝室に枕は一つしかなかったのは一人暮らしだからだと思ったけど、私の誤解だったのかしら?」


私を尊から引き離す為の偽りなんだわ。


「枕は一つでも大きいからいいのよ。彼と一緒に使うんだから」

「あら、変ね。彼のベッドの枕はとても小さくて私が一人で使うのに丁度良かったわよ」


これで江島さんは嘘を言っているのが分かる。

尊の部屋の枕なんて小さい枕よ。クローゼットに隠していなければね。