荷物をデスクの引き出しから取り出すと友美と一緒に営業課を出た。

友美はロッカールームで私服へと着替える為、私はロッカールーム前の廊下で友美の着替えが終わるのを待っていた。


「笹岡さん、話があるの」


友美を待つ私の前に江島さんと一課の女性らしい人が数人やって来た。

江島さんらは私を取り囲む様に立ち、まるで私を威嚇するような目で見ていた。


「あなた達は?」

「白々しいわね。江島さんは専務の彼女なのよ。なのに、よくもそんな事が言えるわね」

「江島さんと専務は長い付き合いなのよ。それを急に現れた派遣社員なんかに専務が本気になるはずないでしょう?」

「それは今も専務の松崎尊と江島さんの交際が続いているという意味かしら?」

「当たり前でしょ!」


尊が一方的に別れを告げたのだと思った。今の江島さんはあの時の私だと思った。

そんな彼女に同情するけれど、でも、今の私と尊の関係は契約に基づくもの。それも、ほとんど尊の脅迫じみた契約だから私にはどうすることも出来ない。


「そうなの、江島さんも可哀想な人よね。でも、それだったら私ではなく彼に言うべきことだわ。私は一度だって彼を誘ったことはないわ。断わりはしていてもね」


私と尊の交際を止めさせたいなら私ではなく尊に言うことね。

私にはどうにも出来ないのだから。

派遣契約期間が終わるまでは……