私は肩をガックリと落とし、しょんぼりとしながら河原を歩いていた。
その時突然、

「ヤッホー!美奈ちゃん♪」

私はつい衣織と勘違いしてしまい、こう叫んでしまった。

「だ……誰っ!あ……美咲ちゃんかぁ……ビックリした……」
美咲ちゃんは5年4組のムードメーカー、いや、 5年全体のムードメーカーだ。
美人でスタイルが良くて、優しくて、明るいのだ。
それに比べて、私は駄目駄目だ。私の取り柄はただ一つ、頭がいい事。

私がため息をつくと、美咲ちゃんはくすくすと笑いながらこう言った。
「そんな落ち込んでいるなんて、美奈ちゃんらしくないよ。どうしたの?私に話してみて」
「いや……実はさ……さっき衣織に会って、3000円奪われた……」
私が苦笑いをしながらそう言うと、美咲ちゃんの顔がちょっと怖くなった。
「衣織の奴……今までワガママだけだったからまだ許していたけど……人のお金を盗むなんて許せない。懲らしめてやる……」
美咲ちゃんはそう言い終わると、また笑顔……というかちょっと切なそうな笑顔でこう言った。
「私のお母さん……去年死んだの知ってる……?」
美咲ちゃんはお母さんの事を思い出すように、空を見上げた。
「美咲ちゃん……無理してそんな辛い事……思い出さなくていいよ……」
私も空を見上げてみた。真っ赤な夕焼けだ。

美咲ちゃんは深呼吸して、話し始めた。

「私のお母さんおっちょこちょいなんだ……。私に死ぬ前にネックレスをくれたんだけどね……その前の年の誕生日プレゼントと、小学校入学祝いで同じネックレス買ってくれてたんだよね」

……私は何も言えなかった。

「だから衣織に仇を討つために、ネックレス……一つだけ犠牲にする。3個も持ってるし……」

「良いの……?」

「良いよ!私これからピアノのレッスンだから!じゃあまた明日!」

そう言って行ってしまった……。
3個も同じネックレスを持っていたって、全部お母さんからのプレゼントだから、それを犠牲にするのは辛いと思うのに……それも私為に……」

やっぱり美咲ちゃんは……優しい!

その頃美咲は満足そうに鼻歌を歌いながらスキップをしていた。
そして、言った。

「ババアが死んだのも、元は私のせい。だってあのババア、私の計画を邪魔して来るんだもん。あのババアが死んだおかげで、衣織を倒す事が出来る上に、学年一頭が良い美奈を貰えるんだもの!あはは!元隠れ部下の衣織に美奈金盗ませて良かったあ!衣織邪魔。死ね!あははははははは」