部屋のドアを開けて、

「何?」

と聞き返すと、階段下に立っている母が申し訳なさそうな顔をしてパチンと両手を合わせる。


「ごめん!水道代の振り込みが今日までだったの!近くのコンビニで振り込んできてくれる」

「あー、分かった」


そう返事をすると、はあ…とため息を吐き渋々階段を下りていく。


それに母は満足そうな顔をした。


 家は水道代を自動引き落としにしていないからこういう事が結構あったりする。


そして、忘れて期限ギリギリになったらこうやって私に頼むのだから、早く自動引き落としにして欲しいと切実に思う。


「ありがとね」と私に水道代の入った茶封筒を手渡すと、スタスタとキッチンへと戻っていく母。


その後ろ姿を見て、再びため息を吐くと、玄関にあるサンダルへと足を突っ込んだ。


 玄関ドアを開けると、そこは朝の明るい風景とは見間違う程の灰色の世界。そして、ポツポツと空から水滴が落ちてきていた。


「あっ、…雨だ」


どうやら夕方から大雨っていう天気予報は当たりらしい。