結局中畑先輩が行きたかった所はさっきのケーキバイキングだけだったらしく、そのままゆっくりとした歩調で私の家へと向かう。
焼き付ける様な熱さを少しでも減らそうと、服の胸元を掴んでパタパタと空気を入れていると、中畑先輩が滅多に呼ばない私の名前を口にした。
「工藤」
最近気付いたが、いつもお前とかストーカーとしか呼ばないのに、中畑先輩がこうやって私の名前を呼ぶ時は本気の話をする時…なんだと思う。
「何ですか?」
「お前、甘いもん大好きなんだよな?」
「そうですけど」
「じゃあさ、大好きな甘いもん食べて腹壊したら甘いもんもう食べねぇの?」
「そんなわけないじゃないですか!1回お腹壊した位で食べなくなるなんてありえませんね」
「だよな。ならさ、……恋愛も一緒かもな」
「えっ?」
唐突なその言葉に目を丸くして中畑先輩を凝視するが、中畑先輩は私へと顔を向けずにそのまま更に言葉を続ける。
「好きなままでいいんじゃねぇの。本気で諦めつくまでさ」
これって、……私の仁先輩への気持ちの事を言ってる?
っていうか、絶対にそうだ。