「失敗でも今日も写真撮ったんでしょ?」
鈴菜のその言葉にゆっくりと首を縦に振るも、いつもの様な興奮は一切ない。
「見ていい?」
「うん。どうぞごかってに」
ひらひらとどうでもよさそうに手を振ると、鈴菜が私の携帯を手に取った。
鈴菜の指が携帯の上を踊る。操作をして、写真を出しているのだろう。
今日の朝、私が撮った写真を。
そんな鈴菜をぼんやりと見ていると、突然鈴菜の眉間にグッと皺が寄った。
「えっと、……仁先輩を撮ったのよね?」
その疑問に私も眉間に力が入れ、コクンと首を縦に振る。
「でも、…この写真。……中畑先輩しか写ってないんだけど」
そう。
鈴菜がいう通り、今日撮った写真に仁先輩は一欠片も写ってない。
私が仁先輩を撮らなかったわけじゃない。
私は今日もこっそり全力で、仁先輩にカメラアプリを起動した携帯を向けていたんだから。