外に出れば、もうすぐ日が落ちるのか薄暗い空。ただ連なる店の眩しい程のネオンのお陰か、この辺りはまだ明るい。


その事にホッと胸を撫で下ろすと、ゆっくりと周りを見渡した。と、同時に近くの電信柱にさっと身を隠す人影が見える。それに思わずフッ…と笑い声が漏れた。


いつもよりもゆっくりと。


でも決して後ろを振り返らず。


何も気付いていない振りをして、家へ向かってただただ歩を進める。そして静かな裏道までやってくると、更に歩く速度を落としそっと耳をそばだてた。


 タン。……タン。


自分の足音とは違う足音が聞こえてくる。歩く速度を速くしても遅くしても、ペースを合わせてやってくるその足音。


 その足音に胸が高鳴る。ドクンッ、ドクンッ…と煩い心臓の音は恐怖からなんかじゃなくて、期待から。



今、振り向いたら見れるだろうか?

あの潤んだ瞳を見れるだろうか?

あの瞳を俺に向けてくれるだろうか?



ギュッと両手で拳を握ると足を止める。そして、大きく息を吸い込むとゆっくりと後ろを振り返った。