最初は、仁は美音一筋だから叶わない片想いになるんだろうな程度に見ていただけだったと思う。でも毎日彼女を見ているうちに、仁に彼女か居るって知ったらどうなるのかな…とか。泣くのかな…とか。そんな事を考える様になっていて。


そして気付いたら、彼女の泣き顔は見たくないな…と思うようになっていた。



泣き顔を見たくない。

だから、……俺が彼女を支えてあげたい。



そう思ってしまうのは、きっと仁に恋をしている彼女に、俺が恋に落ちたから。


そこからの気持ちは一気に波が押し寄せてくる様だった。


 何で彼女は仁しか見ないんだろう…と胸がキリキリ痛くなったり。仁と彼女が上手くいけばいいなんて一欠片も思っていないのに、彼女に全く気付かない仁に苛々したり。自分でもわけの分からない嫉妬の波。


ただ俺がこんな事を思っていても、それは彼女には届かない。廊下ですれ違う時でさえ、彼女の目は俺の隣に釘付けなのだから。



仁じゃなくて俺を見たらいいのに……。

俺を見て、頬を赤くして目を潤ませればいいのに……。



いくらそう思っても彼女のあの潤んだ瞳に俺が映る事はない。



少しでいいから。一瞬でもいい。

だから、




その瞳をこっちに向けて……ーー




そう願ってやまない日々だった。