俺がその視線に気付いたのは、2年生になって2週間程たった頃だったと思う。


図書室に行くと必ず居る彼女。手には本を持っているのだが、目は全く本の字を追っていない。彼女の手の中にある本はきっとカモフラージュというやつだろう。


本で隠す様にして一点を見つめる彼女の視線の先にいるのは、俺の親友である朽木仁だ。


仁のことを見ながら、頬を赤くし瞳を潤ませる。その姿を見て、彼女は仁のことが好きなんだろう事は容易に想像できた。


 ただ一度気付いてしまうと、ついついまた目が彼女を見付けてしまう。


気付かれていないと思って木の陰から仁を見ていたり、こそこそと仁の写真を撮っていたりと、なかなかのストーカーぶりに思わず吹き出してしまった事もしばしばだ。


そんなに彼女は仁の事を好きなのに、決して仁には話し掛けてはこない。だから鈍感な仁は何も気付かない。結局の所、写真を撮る以外はただ見ているだけ。