「で、名前なんていうの?」

「な、名前ですか?」


この状況で何故名前を訊くのか疑問に思い首を傾げれば、中畑先輩がニヤッと嫌な笑みを浮かべる。


「仁に注意しろって言わなきゃなんねぇだろ」



この人、バラす気満々だ!!



「そ、そそそそれだけはご勘弁を!」


中畑先輩の腕にすがりつく様にギュッと飛び付くと、そう言いながら懇願する目を向ける。


それに、ビクッと肩を揺らす中畑先輩。


「なっ!」

「仁先輩には言わないで下さい!わ、わわわ私、……嫌われたくないです」



徐々に声のトーンが尻すぼみになったのは、私の本音だからだ。



自分が仁先輩に好かれるなんて思ってない。でも、嫌われるのは嫌。

仁先輩に後をつけていた奴だなんて知れてしまったら、絶対に嫌われる。そしたら、もう毎日密かに見ている事が出来なくなる。

私の毎日の楽しみが、……無くなっちゃう。



仁先輩の事が、…………好きなのに。