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 昼休みになると、私の机に鈴菜がやって来てお弁当を広げる。その様子を、頬杖をついて目にしながらため息を吐いた。


「ため息なんか吐いて、どうかしたの?」

「うん。……あのさ、鈴菜。……私、大変な事になってしまったんだけど。……どうしよう」

「大変?」


不思議そうな顔をして首を傾げる鈴菜に、「うん」と首をゆっくりと縦に振る。


「聞くだけなら聞いてあげるけど」

「うん、ありがとう。実はさ、私。……中畑先輩の事、好きになっちゃったみたいなんだよね」

「ふーん」

「ふーん。って軽っ!!」


こっちとしては必死に口にしたわけなのだが、鈴菜の反応は思わず突っ込んでしまう程薄い。



何故にこんな反応!?



そう思って訝しむ表情をすると、鈴菜が苦笑いを漏らした。


「いやだって。中畑先輩の事を好きになったからって何が大変なのよ?」

「だって、モテるじゃん!」

「うん。だね」

「だって、王子様じゃん!」

「だね」

「そんなのどう考えても、……私、幸せになれないじゃん」

「あー、そういうこと」

「そういうこと。私、次は幸せになれる恋をしたいんだもん」


 やっと私の言いたい事に納得したらしい鈴菜。ただ、だからといって、それは大変だよね…なんて言葉は返ってこない。