どこか切なさを纏ったその言葉に、胸がキューっと痛くなるが、質問の意図は理解出来ない。
「えっと。……今も見てますけど」
ドキドキする胸を抑えて必死にそう口にするも、「そういう意味じゃねぇの」と寂しそうに笑う中畑先輩。そして自分の言った言葉を誤魔化す様に、中畑先輩の大きな手がわしゃわしゃっと私の髪を乱した。
「は、…はあ」
未だに疑問符ばかりが頭の中を飛び交っているが、そんな事よりも大変な事になっているのは私の心臓だ。
速く大きな音を奏でる心臓は今にも爆発しそうで、胸の締め付けられる様な痛みは増すばかり。自然と息も荒くなっていく自分の姿を中畑先輩に見られたくなくて。
気が付いたら、中畑先輩からわざとらしく視線を逸らして口を開いていた。
「あっ!そういえば今日は学校に急いで行かないといけなかったんでした。私、先に行きますね!」
「いや、もう学校目の前だけど」
「と、兎に角急がないとなんで!」
それだけ言って背を向けて走り出す私は中畑先輩の目にどう映っているんだろうか。
ただ、今の私にはそれ以上何かを考える事も出来なくて、
「ど、どうしよう……」
と言いながら両手で顔を覆い、下駄箱まで走り続けた。