「外、暑いよ」
「鈴菜だって外に出るじゃん」
「私はお金の為よ!」
「そ…だけど」
バイト命の理由はお金の為だとハッキリ言ってしまえる鈴菜。そんな彼女はやっぱり、話すと癒し系要素は全くないと思う。
言ったらどうなるか想像がつくから、思ってても言わないけど。
「告白してガッツリ振られたから図書室に行きにくいとかじゃないんでしょ?」
「うん。それはない」
告白する前に振られてたし。
顔を合わせづらいとかはない。……んだけど。
「なら、問題なしでしょ。麻希って元々は本を読みに図書室に行ってたんだから」
「うーん。そうなんだけど。なーんか、足が重いっていうか……」
そう言って自分でもわけの分からない気持ちに首を傾げた時、廊下から私の名前が呼ばれた。
「工藤!」
よく聞くその声に、目を細めながら廊下側のドアへと顔を向ける。と、同時に細めた目を見開いた。
「なっ!」
声は中畑先輩の声に似ていたが、本当に中畑先輩がやって来て私の名前を呼ぶなんて思ってもいなかった。
だから、開いた口が塞がらない。