「綺麗……ですね」
「だな」
暫く顔を空に向けたまま、ぼんやりと花火を見ていると、不意に横から手を掴まれたと同時にグイッと引っ張られた。
「ほら、帰るぞ!」
中畑先輩がそう言って私の手を引っ張って歩き出す。
その事に、手を引かれているだけなのに何故かドクンッ、ドクンッ…と煩くなる心臓の音。
その心臓の音が中畑先輩に聞こえたらなんだか恥ずかしいと思うものの、この温かい手を離すのも惜しい気がして。
花火の大きな音がやたらと煩い私の心臓の音もかき消してくれるかもという期待を込めて、掴まれていた中畑先輩の手を少しだけギュッと握り締めた。
「仕方ないから、家まで付いてきてもいいですよ」
「バーカ。言われなくてもそうするよ」
もしかしたら。
今日は、中畑先輩に会えたからいい日になったのかも…。
手を繋いで隣を歩く中畑先輩を見ながら、ふとそう思った。