「ただいま」
家に帰ると、
珍しく台所の電気が消えている。
「おじさん?」
声をかけながら電気をつけた。
お昼と夜のお皿が無造作に置かれていた。
荷物を下ろして、腕をまくる。
ミシッと床を踏みしめる音が聞こえて
思わず振り向いた。
その途端、後ろから抱きしめられた。
いや、抱きしめられたんじゃない。
羽交い締めにされていた。
「ん~~~!!」
声を出すにも口を強く押さられている。
腕をばたつかせても意味がない。
怖い。助けて。
煙草の匂いとお酒の匂い。
顔を見ていなくても誰かはすぐにわかった。
バチンッと、思いっきり頬を殴られた。
抵抗をすればするほど、
さらに強い力で殴られた。
「喘げよ、あ?おい、鳴けよ」
気持ち悪くて、
痛くて、
悲しくて、
惨めで、
悔しくて。
早く終われ、早く終われ
それだけを願っていた。
抵抗する力も気力も残っていなかった。
されるがままだった。