昼から少し咳がでていた。

マスクをしてショーケースの側に立つ。


午後7時を回った。

ドアベルが鳴って、常連さんが来た。

傘を閉じてお店に入ってくる。


「いらっしゃいませ」


はるかはマスクを直して姿勢をただす。


「大福と…」


「「いちご大福」」


常連さんは、え?と

ショーケースから顔を上げた。


それから、照れくさそうに微笑んだ。

なんとなく母に似ていた。


「はい、お願いします」


はるかは静かに頷いて、

ショーウィンドウを開ける。



「また、お越しください」

はるかが声をかけると、

常連さんはやっぱり照れくさそうに

微笑みながら頷いた。



雨はもう止んでいるようだった。