玄関のドアを開けると、
中から賑やかな声が聞こえてきた。
はるかは靴を脱いで廊下を進む。
リビングに入ると、翔太が練と笑っている。
こっちに気づいたのか、
翔太は「おかえり」とこっちを見る。
練が振り返ると、「おかえりなさい」と
言ってくれる。
ただいま、とはるかは微笑んだ。
「あ、そうだ、今日ここ泊まっていい?」
3人で鍋を囲んでいる。
しめのうどんを入れていたはるかの手が
思わず止まった。
「無理」
練がビールを開けながら素っ気なく言う。
プシュという音に、
はるかはびくっと身体を震わせた。
思わず箸を落とす。
ビール。
おじさん。
嫌な音。
「はるかちゃん?」
練が心配そうにこっちを見る。
「今日さ、おじさんが交番に来たんだ」
翔太とはるかの視線が合う。
「菊原はるかを探してくれって」
明らかにはるかの顔色が変わった。
「はるかちゃん、家出中?」
いや、もう未成年じゃないしとやかく言うわけじゃないんだけもさど、ほら、もうそろそろ和解…
翔太の声は右から左に抜けていった。
頭の中でぼんやりと、
話を理解する。
固まって動かなくなってしまったはるかに
練が声をかけようとしたその時、
ピリリリリリ…ピリリリリリ…
はるかの携帯が鳴った。
と同時にはるかの体が跳ね上がり、
肘でお皿を床に落としてしまう。
ゴンという鈍い音がして、
辺りに具材が散らばる。
はるかは震える手で携帯を取った。