「その人は怖くない?」


はるかの気持ちがおさまった頃を

見計らって、理子は聞いた。


「はい。とても優しい方です」

「大丈夫?わたしの家にしばらく泊まる?」

「理子さん、彼氏と同棲中じゃないですか」

理子は、うん、まあそうなんだけど、

と答える。


「大丈夫です、本当に」


はるかはそう答えて湯のみを空にした。



よろしく伝えておいて、

と理子さんは大福の詰め合わせを渡してくれた。

それから、

何かあったらすぐに電話して。
かけつけるから。

とも言ってくれた。


ありがとうございます、はるかはそう言うとお店を後にした。



理子ははるかの後ろ姿を、

見えなくなるまで見つめていた。




賑わう駅前大通り。

1人の男性がじっとこっちを

見ているのは到底気づかなかった。