「遠い親戚ってことで。きっとお隣さんも怪しがりますし」
はるかは食器を洗いながら呟くように言う
。
カチャカチャと音がする。
それと、時計の秒針の音しか聞こえない。
練が静かに頷くのを横目で見る。
「わたし、母が小さい時に亡くなって、父は行方知れずなんです」
「一人暮らし…ですか?」
なんで家に帰りたくないんだろう、
それもわかるかもしれないと
聞いた問いかけに
はるかは答えてくれなかった。
ジャーーーーー
という水道から流れる水音が
大きく感じた。
「…親戚の家でお世話になってます」
はるかはそれだけ言うと、
再びスポンジを動かした。
その横顔が、なんとも言えない表情で。
悲しみ、
苛立ち、
練は布巾を手に取って、
洗われた織機を無言で拭いていった。