授業が終わって電車に乗る。
1時間ほど揺られて最寄り駅につく。
駅前にある和菓子屋さんがバイト先。
「はるかちゃん、今日もよろしくね」
店長の理子さんが髪を結い直しながら
笑顔で声をかけてくれた。
「いらっしゃいませ」
その人は今日も来た。
はるかと同い年か、少し上の男の人。
いつも買うものは決まっている。
「大福2つと、いちご大福2つください」
1週間に1回は必ず買いに来てくれる。
「ありがとうございました」
はるかは見慣れた背中を送り出す。
「はるかちゃん~、食べよ~」
お店にお客さんがいなくなると、
必ず声をかけてくれる。
賞味期限が切れそうなものを2人で食べる。
毎回恒例。
「もうすぐはるかちゃんの誕生日ね。お父さんは?まだどこにいるかわからないの?」
「…はい」
「おじさんは?優しくしてくれてる?」
言えない。
仕事を辞めて家で
食っちゃ寝食っちゃ寝してるなんて
とても言えない。
最近になってから
パチンコをするために
お金を持っていかれるなんて、
そんなことも言えない。
「はい、とても」
嘘をついた。
「そう、よかった。残り持って帰っていいわよ」
ありがとうございます、
と、声をかけて袋に入れる。
ここの大福はとても美味しい。
嘘をついた。