「切るで」
一方的に言ってブチッと通話をお終いにする。
「あっ…ちょ…」
ちょっと待って。
言おうとして聞こえる虚しい機械音。
「俺、好きだったんですよ、はるかさんの事」
ビール2杯目で既に酔が回っている航平。
「好きっていうか、気になるっていうか。一つしか変わらないけど、でも俺の方が年下だし、向こうにそんな気ないだろうなとか思ってて」
枝豆を1粒ずつ口に運ぶ。
理子はメニューから航平の枝豆に視線を移す。
「あの日、梁島さんに後ろから抱きしめられてるはるかさん見て、年下だからどうかとか、そういう事より前に、はるかさんは最初から俺のこと見てなかったなって」
「ま〜結構お世話になったみたいだしね」
すみません、と店員さんに声をかけて
ホッケの塩焼きとキムチを頼む。
理子はメニューを置いて、航平を見据えた。
「くっついたわけじゃないみたいよ」
「え?」
「この前梁島?さんの友達がお店に来て」
「長身の人ですか?」
理子は思い出すように添乗を仰ぎ見る。
「うん、長身だった。その人が言ってたよ。はるかちゃん、引っ越したみたいで、梁島さんが訪ねた時はもう違う人が住んでたって」
なくなった枝豆の器を弄ぶ航平。
「携帯は変えてないし電話かければ出るらしいけど、どこにいるんだか言ってくれないって」