「菊原さん、いまど…」
「京都や」
えっ。と聞き返すもびっくりしすぎて口から声が出ない。
喉で声がつまる。
「それにな、言うたやろ。わたしの名前、はるかや」
「あ…、はい。はるかさん」
フフッと笑う声がする。
「何、何で笑ったんですか」
「梁島さん年上やろ。なんで''さん"つけんねん」
『間もなく2番線に電車がーーー…』
練の携帯を通じて、はるかもホームにいると勘違いしてしまいそうになる。
「電話って便利やな…」
独り言として呟いただけなのに、「そうですね」と返ってくる。
ますます便利だと実感する。
「明日にはそっち帰る」
「え?」
「え、何?」
「京都に住むのかなと、思って」
「アホ。母の墓参りに帰っただけや。明後日が命日だから」
「命日こそ…」
「命日こそこっちにおれって?わたしのせいで死んだようなものなのに、思い出したくないんよ。あと、報告したし。色々あったこと、何もかんも全部」