3ヶ月後。

12月になった。

はるかの産まれた月になった。


街はジングルベルが鳴っている。
ホワイトクリスマス。初めて見た。


はるかは、ほうっと白い息を吐く。
白い息がほんの少し上でふんわりと消えた。


赤い傘を差した舞妓さん。

江戸にタイムスリップしたかのような家々。
軒先。


「今夜はえらく降りますなあ」

「へえ」

「おおきに」


耳に入ってくる言葉。
ここは京都なのだと、改めて思う。



携帯がコートの中で震えた。


『梁島 練』


はるかは金平糖屋さんの軒先で、電話に出る。


「はい」

「菊原さん、今どこですか」


雪が大粒になってきた。
これは本当に積もるかもしれない。


「お店、辞めたそうですね。どこにいるんですか」

「梁島さん」

「…はい」

「成海さん、幸人さんと結婚したそうですね」

「はい。籍、入れてなかったみたいで」

「梁島さん。わたし1からやり直そうと思ってるんです。もう就職先も決まって」

「どこでですか」


言うたら、梁島さん、会いに来るやろ


初めて聞くはるかの方言。


「行きます」

「言わへんよ」

「会いたいです」