「大丈夫、ありがとう。帰るね」
航平にそう言って、理子に頭を下げる。
「気をつけてね」
お店の引き戸を閉めるとき、航平の声が耳に届いた。
連絡先が書かれた紙を弄ぶ。
ため息をひとつついて、ベッドに横になった。
壁にかかっている時計を見ると、もう4時近く。
ご飯作ろう。今日は何にしよう。あ、ジャガイモがあるから肉じゃがにしようかな。でもニンジンがないなあ。買いに行くのもめんどくさい。とりあえずお風呂入ってそれから考えよう。航平くんにメール送らなくちゃ。航平くん。航平くん…。航平くん……。
目が覚めた。
時計を見るともうすぐ明日になる。
ボーッとする頭。
窓を閉めようとガラスに近づく。
月が綺麗。
はるかはポケットから携帯を出して、
いつもより大きい月を写真に収める。
蚊取り線香に火を付けて、
航平の連絡先を携帯に登録する。
メールを送ろうとしたが、
夜も遅いので明日にする。
連絡先を閉じようとして指が止まった。
『梁島練』
ため息をついて携帯をベッドに置いた。