ぐらついた身体を咄嗟に支えた航平。

目頭を抑えて、大丈夫、と制する。


「外暑かったから、多分」


理子が急いで持ってきてくれた冷たい麦茶をちびちび飲みながら、
航平を横目で盗み見る。


あの時と同じ目。

出ていきたくても恐怖で出ていけなくて、
自分の殻に閉じこもって真っ暗な闇の中を
ただ何もできないまま過ごすあの日々。

もう、夢にも出て来なくて、
魘されることはなくなったのに。

今日は嫌な夢を見そう。



「大丈夫ですか、菊原さん」

空になったグラスを持って、航平は心配そうにはるかを見る。