「マニュアルにしようかな」
パンフレットから顔を上げた航平と目が合う。
意外そうな顔で見られる。
女だから、男だから、
自分で選択できない性別のせいで
女だからと決めつけられたくない
「マニュアル運転できたらかっこいい」
「それって…男の人でもかっこいいと思う?」
さっきまでの微笑みは口元になかった。
笑ってない目元。
しばらく前にこんな目を向けられた気がする。
背中に冷や汗が流れる。
なんだろうこれ、あの時と同じ。
逸らせない目。
航平という存在に気圧され半歩後ろに下がる。
その時、
「あれー、はるかちゃん」
理子の呼ぶ声がして、眩暈がした。