一旦店に戻って残りの段ボールを車に積むと、
航平は慣れた手つきで車を発進させた。
汗ふく?
と、差し出されたタオルで、
遠慮がちに頬を拭う。
車内は心地いい音量で、洋楽が流れていた。
ムスクの程よいいい香りも漂ってくる。
「この曲、いいね」
「ダニエル・パウターです」
お洒落空間だなあと、
はるかは車内を見渡した。
「あ、ありがとう、今日お休みなのに」
「いいえ、何かしてた方が気が紛れるから」
意味深発言。
やはり、ドタキャンした相手は彼女。
そして、ディズニーランド行こうとしたのも彼女。
さり気なく服装をチェックしようとして、
やめる。
変な詮索はしない方が航平のため。
「電車で運ぼうとしてたんでしょ?」
「うん、5往復しようかと」
ははっ、と航平は爽やかに笑う。
暑さを感じないその笑顔。
外にいるわけじゃないんだから当たり前。