ピンポーン、と家のチャイムが鳴り、
成美は立ち上がろうとする。
それを練はやんわり止めて、
成海の膝の上にかかっていたひざ掛けを
ゆっくりとかけ直してあげる。
カレーをかけてある火を止めて、
玄関を開けると、
翔太が立っている。
「なに、どうしたの」
「お腹空いた」
練の横をくぐり抜け、ふと、靴箱を見る。
そこには、丁寧にしまわれた、
何足かのヒール。
そして翔太の足元には、
履き慣れてるであろうスニーカー。
「えっ、なに今日カレー?」
なんとなく胸の内にもやもやが広がってくる。
胸の全部に広まらないように、
わざと明るい声で、
翔太は部屋に上がった。