「高島さんも休んで下さい……おやすみなさい……」 ゆっくりと足を前に出す。 その胸の内には、一切の感情も持たずにいる。 何も考えない。 何も感じない。 そうすることでこの10年間、何とか教師として教壇に立てた。 「おやすみ」 背後の高い位置から声がして振り返った。 明らかに男にしか見えない高島の顔を眺め、目の奥に涙が潤んでくるのを感じる。 (……っすん) 心の中でいつもの声を出して向き直る。 信用するな。 アオムシも男だ………。