「この人が……ここに住んでいた人?」

「……」

「この人、どうしたの? 何処にいるの? 子どもは? 店長さんの子どもじゃないの?」


冬真は理紗の手から写真立てを取った。

大きく溜め息を吐いて、写真立てを伏せて置いた。


「俺のことはいいよ。それより足、消毒したほうがいいか」


冬真はあちこちと引き出しを開けて薬箱を探していた。

薬箱なんて、ずっと使ってない。

以前だって自分で出してきたことなんてなかった気がする。

なかなか見つからない薬箱とは反対に沙世子と真湖に繋がる小物が幾つか目に入ってきた。

そのたびに冬真は手を止め、ため息を吐いてまた別の場所を探す。


「別にいい。消毒なんて。ティッシュと水があれば」


冬真はティッシュ箱を理紗の前に差し出し、台所に行き、コップに水を入れて持ってきた。

理紗はティッシュを水で湿らし、膝の傷口を拭く。

冬真は携帯電話を取り出して楓の番号を押しかけたが手を止める。


「ちょっと店に行ってくる。あっちには救急箱があるから」


そう言って、冬真は出て行った。