冬真はタクシーを拾い、理紗と一緒に乗り、行き先を自分の家に指定した。

タクシーが止まったのは『You‐en』から五十メートルほど離れた場所の一軒家だった。


「ここが店長さんのおうち?」

「そう。古い中古住宅だけど」

「誰かと住んでいるの?」

「……いや、今は一人」

「前は誰かと住んでいたのね」


中に入って、電気を点け、冬真は寝室の大きな洋服ダンスから最初に自分の服を取り出したが、ふと手を止め、一番下の引き出しから女性用のシャツとジーンズを取り出した。

女性ものの服を手渡されて理紗は少し驚き、そして尋ねた。


「本当にあるんだね。これ、私が着ていいの?」

「俺の服のほうがいい?」


逆に尋ねられ、理紗はふっと笑いその服を受け取った。

だが、何かを見つけたのか、次の瞬間には理紗の表情が硬くなる。


「どうかした?」

「……ひとつ、訊いていい?」

「なに?」

「この服の持ち主って、この人?」


写真立てを手に取り、青ざめた顔でそれを冬真の顔の前に差し出した。

そこには沙世子と真湖の写真が入っていた。