ターセル町長が顔をクシャクシャにして笑う。

その顔は表情豊かで、私のよく知ってる亀とは全然違っていた。



よく見れば顎からは白い髭が申し訳程度に伸びていて、先の方をリボンで結んでいる。

肩に掛けている布は、色がところどころ剥げていて、何とも形容しがたい色だった。

…オチャメな亀じいさん。

異質なこの世界は奇妙なはずなのに、どこか私をワクワクさせた。



「儂らはね、君を待っておったよ」

「…私を?」

「うむ」



ターセル町長は垂れた目を更に垂らして続けた。



「異形の者よ」

「…異形の、者…」

「名前は何と言う?」



儂はここの町長をやっておるターセルじゃ。

そう言うターセル町長の目を見ながら、静かに口を動かす。



「…笹崎、桃彩」

「サ…ササ、ササキ」

「…桃彩で良いです」

「ほっほ、そぉか」



ターセル町長、ササキになってるし。

『さささき』

言いにくい名字のせいで、私のあだ名はいつだってモモセだった。