そんな訳で、あたしが柏木さんの家に行くことはないと思ったのだが……
日曜日の昼過ぎ、急に慧太郎から電話がかかってきた。
無視を決め込んだが、迷惑電話並みにしつこくて。
仕方なく出てしまった。
柏木さんの家に行くこと自体が嫌なわけではない。
柏木さんが来てほしくなさそうだったから。
だから、行きたくないのだ。
あたしたち、付き合っているんだよね?
それなのに、家に行ってはいけないの?
そもそも、連絡先すら知らない。
「はい……」
テンション低く出た電話の向こうで、
「あ、澪?」
いつもの調子で慧太郎が喋る。
そして、なんだか騒がしい声が聞こえる。
きっと、柏木さんと中根さんだろう。
慧太郎と電話しているのに、電話の向こうに柏木さんがいると思ったら、ドキドキした。