柏木さんに彼女が出来たという噂は、あっという間に広まった。
あっという間に。
昼休み、いつものように食堂に行き、可奈と昼食を食べる。
食堂は柏木さんの彼女の噂でもちきりで。
いたるところから、「柏木さん」とか「カシタカ」なんて単語が聞こえてきた。
そして、もちろん可奈も知っているようで。
「澪……カシタカなんかと付き合わなくて、本当に良かったよ」
なんて言ってくる。
その、カシタカの彼女があたしだなんて、思ってもいないだろう。
こんな状況の中、あたしだなんて言えるはずもなく。
社内恋愛といったら、秘密だろうなんて思ったりもして。
ぐっと黙るあたしがいた。
それに、柏木さんはあたしと付き合うなんて言ったけど、あたしのことを好きな訳でもないし。
考えれば考えるほど、複雑になるのだった。