「もう、モテなくていいんですぅ」
昼休み、誰もいないテラスで、柏木さんはあたしに言った。
あたしはそんな柏木さんにごめんなさいと謝る。
ごめんなさい、柏木さん。
あたしはあなたのファンを奪っただけじゃない。
柏木さんのトラウマを繰り返す原因を作った。
オタクを理由に失恋した柏木さん。
それから、柏木さんはオタクを隠すようになった。
そして、オタクを隠した柏木さんは、全てが上手くいっていた。
だけど、
「澪ちゃんが分かってくれればいい」
そう言った柏木さんは、意外にもすっきりした顔をしている。
「それに俺は、一人ではないんです」