「それは、澪ちゃんは俺に振られていることになっているからじゃないですか?」




柏木さんは前菜に箸をつけながら呑気に言った。





あたしは柏木さんを見る。

スーツを着た柏木さんは、やっぱりカッコイイ。

だけど、今の柏木さんは久しぶりに見るキモオタモード。

なよなよしていて、自分に自信がなくて。

そして、可愛い。






そんな柏木さんは、あたしを本当に高級霜降りステーキの店に連れてきてくれた。

ディナーなんて一万円近くするのに。

あたし、冗談だったのに。

これじゃまるで、貢がせているみたいじゃん。