それが合図だった。
河田さんはプリプリと自分のデスクに戻っていってしまう。
そんな河田さんを見ていると、柏木さんが可哀想に思えた。
また、嫌われたから。
オタクを理由にして。
「南條。今日、メシ行かね?」
「嫌です」
「奢るから」
「当然です。でも、嫌です」
あたしは立ち上がり、柏木さんに背を向ける。
もう、柏木さんとは関わりたくない。
しっかり反省して謝ってくれるまで、関わってやらない。
そう思うのに、胸がドキドキするのはなんでだろう。
顔がにやけるのはなんでだろう。
「あたし、今日は高級霜降りステーキが食べたいです」
「……仕方ねぇな」
柏木さんは満足そうに鼻で笑った。