この場から逃げたかった。
柏木さんの近くになんていたくなかった。
だって……
「柏木君」
ヒールの音とともに現れたのは、モデルのようなクールビューティーの河田さんだったから。
不覚にも、立ち上がったあたしは河田さんと並んでしまう。
河田さんのほうが小顔だし、痩せている。
おまけに美人。
あたしが惨めになるほどに。
まるであたしが晒し者だ。
それでも、河田さんはやっぱり、あたしなんかに見向きもしない。
あたしの横を素通りして、
「これからよろしくね、柏木君」
なんと、柏木さんの肩に手をかけた。
あたしが触れるだけで真っ赤になるくせに、柏木さんは余裕の表情で河田さんを見ている。
それが酷くイラつく。
だけど、何も出来ないあたしは負け犬で。
美男美女をただ眺めていた。