だけど……






「柏木さん、おはようございますぅ」




女性の黄色い声に囲まれて出勤した柏木さんを見ると気分が悪くなって、あたしは柏木さんから目を逸らす。

こんなあたしの気持ちを柏木さんが分かるはずもない。

いつものように自分のデスクに座り、



「南條、おはよう」



いつものように挨拶された。





「……おはようございます」



不貞腐れたように呟くあたしに、デリカシーのない柏木さんは続ける。




「身体大丈夫か?」






ほら。

あたしの身体の心配しかしていない。

柏木さんは、あたしの心を傷つけたのに。





あたしは書類に目を落としたまま、無言で首を縦に振る。




「南條、俺だって心配するんだぞ」



「……ハイハイ」




あたしは馬鹿にしたような返事をして、立ち上がった。