おもむろに柏木さんに五千円札を渡す。
「いいよ、奢るよ」
そう言う柏木さんを睨みつつ、無理矢理五千円札を柏木さんの前に叩きつけた。
そんなあたしを見て、くすりと笑う河田さん。
あたしがいなくなってから、散々悪口を言うのだろう。
「おい、南條!」
慌ててあたしを呼ぶ柏木さんを背に、あたしは店を飛び出した。
胸がむしゃくしゃする。
二人の世界に入ってしまって。
柏木さんの彼女はあたしなのに。
あたしじゃないと、いけないのに!
会議室に戻り、資料を見る。
それでも、やっぱり頭に入ってこなくて。
必死に涙を我慢して、震えていた。
震えているうちに、気分が悪くなってきて。
寒気とともに、意識が朦朧としてくる。
「あれ?南條さん、顔色悪いですよ」
近くにいた男性が、とうとうあたしに声をかけてくれた。